「ねえ、ここから世界を見わたしたら、君には何が見える?」 私は彼に聞いた。
「もちろん、」彼は言った。「何が見えるか話してあげるよ。」
深い青い海につきだした崖の端に僕たちは腰掛けていた。リーは自分の見ているものについて話し始めた。リーは力強い声ではっきりと、世界の不思議について私に話しだした。
海のすぐそばにいると、岩にぶつかる波の音で人の話はかき消されるものだが、その時は、とても静かで、海はどこか遠くにあるような感じだった。
「水に映っているものを見てみろよ。生き物がいっぱいいるだろう。蛍は水の上でダンスをしているみたいだろう。競争で岩にぶつかってくる波の音を聞いてごらん。岩は強くて固くて、それでも波はしつこくやってくるんだ。ああ、それが波にあたえられている特徴なんだ。新鮮な、塩の臭いのする空気を胸いっぱいに吸ってごらんよ。僕に力を与えてくれるな、まるで麻薬みたい。崖の上に立っていると、微風がまるで漂っているかのような気もちにぼくをさせる。実際、ぼくは大気の常習者だな。君も風が運んでくる喜びを感じない?
これから先も、何世代にわたって、人はぼくが今しているように、この場所にやってきて、ぼくが感じているように感じると、信じるね。」
私は、彼の楽天家ぶりにほほえんでしまった。彼のおとくいの言葉、希望のひびきがあった。でも現実が私の心を圧倒する。心中深く悲しんでいると、リーが私の顔を見て、悲しく微笑んだ。「あー、君は微笑んでいるのかもしれないけど、目がそう思っていないって、言ってるよ。」と、悲しそうに言った。
「リー、また不可能なことをやってのけたね。私の考えを読んでるもの」といって私は笑った。「ジョン、君の見ているものは何?」と彼は聞いてきた。
「ぼくも君が見ているものと同じものを見ているよ。ただ僕はもっと現実的なだけだよ。」と私は答えた。「ぼくには、将来、願わくばずーっと先であってほしいけど、この海がオイルで覆われているのが見える。魚の死骸が散らばっている海岸、油まみれの海洋動物、毒が体内に入っている海洋動物がこの海岸にたくさん打ち上げられているのが見える。’死’という単語が心の中に火をつけた感じなんだ。ぼくの頭骸骨まで燃やし尽くすような、そんな気がする。未来は汚らわしいにおいがするよ。これがぼくが見ているものだよ。」私は予言して言った。
その場の雰囲気が私の言葉と同じくらい暗くなった。二人とも黙ってしまった。そんな沈黙を破ったのはリーの一言だった。「ジョン、いやに悲観的だな、本当に分かっているのかい?」
「分かってるよ、」自分だけに聞こえるようにつぶやいた、「僕にはわかるんだ。」
ゆっくりと立ち上がって、自動車のほうへ向かって歩いた。リーが後ろからついてきた。二人はおやすみを言って、家に帰っていった。
**********************
翌日、私は子供たちのグループの前に立っていました、寝ぼけ眼で。あくびをかみころすことに腐心しながら、私は言いました、「さあ、今日は、環境の世話をすることについて勉強しようね。さて、前に見たことがある森や海洋や湖のことを考えてごらん。今度は、森の木が全部切り倒されているところを想像してごらん。海がオイルに覆れているところを。そうすると、たくさんの動物が殺されるでしょう?すみかを失うでしょう?そんなにびっくりしないで聞いて欲しいんだ。これはありえないことではない、と言うことを覚えておいて欲しい。君たちは、それと自分とは関係がないと思うだろうけど、それが大いにあるんだ。これらの問題についてどんなことが君たちに出来るか。一緒にやろう、違いをみせることができるよ。君たちはまだ小さいけれど、やがて成長して、いつか会社さえ持つかもしれない。 その日が来たら、一つだけ思い出して欲しいんだ。どんな小さなことでも助けになると。そのときには、一緒になって、地球を守ろうね」
もう少し上の学年の子が聴いてくれていれば、私のスピーチはインスピレーションを与えたかもしれない。でも子どもたちは、何を話しているのと目を白黒させて、私を見つめて、立っているだけだった。彼等が成長したとき、ジョン・フォスター先生、かく言う私のことだが、の授業を思い出し、先生の言った言葉や忠告に注意を傾けてくれることを私は希望する。私の世代はあまり役に立つことはしてこなかったが、この子たちの世代は役に立つことをするかもしれない。私は望むだけだ。
2002年 特別賞(中学生部門)
シンガポール アングロ・チャイニーズ学校 中等部3年 リー・ウェイ・リアン・レオン