2002年度優秀賞(中学生部門)〜記念すべき第一回目

「正之、きちんとゴミ拾った?。」

僕は数年前から父と一緒によく釣りに行っている。そして、そのつど父はこの言葉を必ず言っている。僕の父は、このようなゴミのことや、社会上での礼儀にとても厳しい。僕がまだ釣りを始めて間もないころ、このようなことがあった。

「そこにゴミ捨てればダメだよ。」

えっなんで?と僕は思った。それは、釣りをしている場所のすぐ近くにあった。ゴミかごにゴミを捨てようとした時のことだ。まるで、ハトが豆鉄砲をくらったような顔をしている僕に対し、父はこう続けた。

「そこにゴミを捨てれば風なんか強い日はゴミがとんで海に落ちちゃうでしょ。だから釣りでどうしても出ちゃったゴミは自分たちで持って帰らないといけないんだ。」

僕にはそのことが納得できなかった。ゴミかごは、ゴミを捨てるためにあるのにと思っていたからである。しかし、ある日のことだ。

その日は、とても風が強い日だった。釣り道具を持ちいつもの場所へ移動した時、僕は目をうかがった。そこにはおびただしい数のゴミが散乱しており、海にも同じようなゴミが波間に漂っていた。僕は父の言った意味がようやく理解できた。この様子を見て、隣で釣りをしていた人が、こう話しかけてきた。

「昔はこんなにゴミ落ちていることなんてながったのにな。そこにゴミかご置いたとたんに。十四、五年前だったら、ここらへんでも、ほんの一時間釣っただけで百、二百のアジが釣れたんだ。今じゃ海も汚れちゃったもんな。」

その人の話を聞くと、ゴミかごを置きはじめたのはほんの二年前のことだそうである。ほんの二年間でこんなにも変わってしまうか、と僕は驚いてしまった。自然を汚す事なら誰でもできるが、元に戻すことはそう簡単なことではない。

父と僕は釣りを始める前にゴミ拾いをすることにした。ゴミ拾いが終わり、きれいになった水面を見ると、さっきまでは姿が見られなかった、海鳥が海の上に羽をおろし休んでいた。僕はとてもすがすがしい気持ちになれた。釣りが終わった後の始末も僕達は念入りにした。

美しい自然を取り戻すには、自分のゴミはもちろんのことだが、それに加え落ちているゴミを一つでも多く拾うことだと思う。美しい自然の中で生活することが、二十一世紀の本当の文化的生活だと僕は考えている。

釣りを通して、環境保護活動の僕の記念すべき第一回目はこうして記されたのである。そして、誰にでもできるこの一歩を人々に呼びかけていくことにより、次の二歩目へと、踏み出していきたいと思っている。

2002年 優秀賞(中学生部門)
青森県 中学3年 福地 正之