2003年度審査委員長賞(中学生部門)〜一人一人の力から ー 「富士山クリーン作戦」

アパートのベランダから目の前に富士山がドシンとそびえ立つ。頂上は5月というのに、真っ白。傘、茸、渦、流しと種々の名の頂の雲。刻々と変わる四季変化。目の前の毎日のあたりまえに広がるこの光景を幸せだと思う。

ぼく達家族は5年前から富士山の清掃活動に参加してきた。名前は富士山クリーン作戦。今年の担当は5合目近くの数百メートル。全国から700人を越えるボランティアが集まった。今年もゴミの量と種類の多さに、ビックリ。さすがに、登山道上には遠慮が見られたが、少しそこからはずれるや否や、たばこ、空き缶、ペットボトル、缶詰の缶、ビニール袋、ティッシュ、紙、生ゴミ、布切れ、スプーン、レトルトパック、靴、壊れた傘、プラスチックや金属の破片、そして、三輪車や車のタイヤも捨ててあった。ここはゴミ箱じゃない。富士山の登山口だ。今回も、収集用ゴミ袋はすぐにいっぱい。半日で、合計800キロのゴミが集められた。ぼくは、とても悲しくなった。

しかし、清掃活動は、楽しいこともいっぱいある。いろいろな発見ができることだ。赤、茶、青、ピンクの様々な色の石。中にはピカピカ光り輝くものもある。小さなわき水。小石を一つ拾い上げる。そこには可愛いサワガニ。「何すんだよ!」怒るような顔をして、隣の石の下に隠れる。この石にはトビケラの幼虫も、ピッタリとついていた。落ち葉の下に、3個の楕円形の白い卵がきちんと並んでいた。「トカゲか、ヘビか?」そっとそのままにしておいた。木の根近くに、オサムシ5匹、コツコツと餌を運んでいた。花を求め、集まるカナブンとチョウ。「どけ、どけ!」そこに割り込む蜂。木の枝にはマイマイ。軽く糸に触れると、「餌かな?」と顔を出す、黒と黄紋様のカラフルなクモ。動物と植物の共存。フンや落ち葉は微生物が土に戻す。こうして、ここに住む生き物みんなが力を合わせ、富士山の自然を守っている。    富士山にはたくさんのボランティア活動がある。地元のぼく達だけじゃない。清掃活動だけをとっても、年間3万人。ここ山梨県はもちろん、静岡、東京、神奈川、そして全国に広がっている。それはこの活動を、NPOなど、善意の人達が、しっかりと強く支え育ててくれたからだ。さらに、この様に自然を守るという参加者は、近年急激に増加しているという。この事実を学び、とてもうれしかった。

今にも壊れそうな地球。広がる異常気象。京都議定書も守れない世界の現実。繰り返す争い、テロ、戦争。しかし富士山を始め、世界中のあちこちから、「地球環境を守りたい。」という人の輪が、直実に大きく広がってきている。同時に燃料電池、風力、太陽光発電地、地球に優しい技術も、次々に実用化している。

命いっぱいに輝く、緑の地球を、未来に引き継ぎたい。この目標に向け、みんなで力を合わせ、助け合うための合い言葉がある。

「さあ、みんな。ぼくたちの地球を守ろう!」

2003年 審査委員長賞(中学生部門)
山梨県 中学校2年 嶋田 修一郎