2003年度環境大臣賞(小学生部門)〜『タマちゃん』が教えてくれたこと

最近、テレビや新聞に、毎日のように登場しているアザラシがいます。アゴヒゲアザラシの『タマちゃん』です。

 タマちゃんは、最初たま川にいて、次につるみ川、そして今度は、あら川にあらわれました。タマちゃんを見ると、多くの人が、「あっ、タマちゃんだ。かわいい。」と言いました。わたしも、ずっとそう思っていました。わたしは、タマちゃんが、まい子なりお母さんとはぐれた時のわたしと、にているとも思っていました。だから、ずっとかわいそうにとも、思ってきました。

この間、つりばりがタマちゃんの目のところにささり、赤い糸がたれ下がったじょうたいになりました。多くの人が、「かわいそうに。何とかとれないかしら。」と言いました。わたしも言いました。その後、はりがとれてみんな喜びました。わたしもです。

でも、先日、インターネットでアゴヒゲアザラシを調べていたわたしは、頭を何かで強くたたかれたような気がしました。ものすごく大きなまちがえをしていたと思ったのです。

アゴヒゲアザラシの家は、北きょくの流氷です。そこで、スケソウダラや、サケ、ハシボソミナギドリなどを食べているのです。でも、タマちゃんは、東京の近くにいるのです。わたしは、タマちゃんが、いつも何を食べているのか、不安になりました。東京の川に、スケソウダラやサケはいないからです。

わたしは、この時初めて、タマちゃんが東京の近くにいるのが変だと思ったのです。わたしは、なぜタマちゃんが東京に来たのか考え始めました。タマちゃんは、流氷に乗って来たはずです。でも、ふつうなら北海道の北の海で、流氷は止まるのです。ところが、地球温だん化で暑くなり、氷が水になってしまったから、タマちゃんの氷を止めてくれる所がなく流氷の流れるまま、東京に来たのだと思いました。

わたしは、今回のタマちゃんの出来事が、実はいっしょに写真をとる問題でも、さわいでタマちゃんに声をかける問題でもないと思いました。タマちゃんは、人間が便利な生活を求めたため引き起こした、地球温だん化のぎせい者だと気づいたのです。

「タマちゃん、かわいそうだな。」という思いが、いつの間にか「タマちゃん、ごめんね。」に、わたしの心の中で変わりました。

わたしはこの時から毎日、タマちゃんの仲間が住んでいる、北きょくの氷がこれ以上とけないように、むだな電気を消したり、クーラーの温度をゆるめにせっていしたりしています。わたしは、タマちゃんのつらさを考え、少しでも地球や自然や動物たちが生きやすいように、できることから毎日していきたいと思いました。もう、ゆっくりながめているじょうたいではありません。二頭目のタマちゃんを出さないよう行動する時なのです。

2003年 環境大臣賞(小学生部門)
東京都 小学校4年 岡部 達美