2004年度特別賞(中学生部門)〜祖母の庭

蛇口のしめ方がゆるかったとみえて、水が細く流れている。こんな光景を見た時には、急いで水を止める。今や水が、昔たとえて言ったように、「湯水のように」使えるものではないことを、知っているからだ。

今年の三月に、京都を含む近辺の都市で、第三回水フォーラムが開催された。世界中の生物の命をささえる、自然界からの恩恵、水についての国際会議だ。このフォーラムは、私に多くの真実を教え、考えさせてくれた。

十数キロも、毎日水をくみに行くために、学校を休んだり、早退しなくてはならない、小さな子ども達。くみに行く水がない所では、水を飲めずに、亡くなる人が出る。あるいは、水があっても、その水が汚染されているために、水を飲んで伝染で病亡くなる人も、多くいる。

世界の人口の四十パーセントが、衛生的な水に接することが出来ない。世界の病気の八十パーセントが、水が原因で起こっているという。また、毎日数千人が水不足で亡くなっている、との報告がされた。

水を通して、さまざまな国の断面が見えてくる。水問題は、健康、貧困、エネルギー、気候、人口など、あらゆる環境問題の根底にあることがわかる。しかし、日本人は、世界のさまざまな貧困の現状について、まだ本当には、よくわかっていないのだ、と気付かせる、次のような意見に出会った。

「日本では、水を大切にしよう、という言葉はみんなに素直に受け止められるでしょう。でも、水を満足に使えないアフリカの人達から見れば、『私達には、大切にすべき水がありません』と言われてしまうかもしれません。」というアフリカの声。

また、会場で配布された飲料水を飲んでいたオランダの参加者が言った。 「おいしい水だけど、飲みきれずに残りを捨てていく人が多い。すごくもったいない。せっかく水の大切さを話し合う会議なのにね。口で言うのは簡単だけど、実行は難しい証拠。」

水の存在を深く認識してない日本人には、耳が痛い言葉だ。改めて、水のありがたさを実感し、水を大切にすることについての、真の意味を考えさせられる言葉だった。

生活が豊かになると、使う水の量も増える。水は先進国だけのものでも、金持ちのものでも、人間だけのものでもない。水を大切にやりくりして、できる限り汚さず自然にかえす努力をすること。それが、人間が未来に責任を持つことにつながる。

水フォーラムの最中にも、イラクの戦火が伝えられた。生命にかかわる水問題を話し合う一方で、戦争による殺し合いが行われている。世界中の人々に、早く目を覚まして欲しい。美しい水の惑星が死んでしまわないように、心を一つにしたい。

2004年 特別賞(中学生部門)
タイ バングラムン・スクール 中学2年 ライワット・トングチェード