まだ夜も明けない頃、私は砂浜にいた。子ガメの放流をするためだ。まだ生まれて間もない子ガメ。それは、とてもかわいかったのを覚えている。しかし一つ、気にかかった事があった。講師による子ガメの説明だ。
子ガメは生まれたらすぐに海に向かって歩き出す。しかし、砂浜を走る車に轢き殺されたり、その後にできた車輪のわだちにはまったりして、海に出ることさえできなくなっている、というのだ。ショックだった。かわいそうと思うよりも私たち人間に怒りを感じた。
どうしてこのような事が起こるのだろうか。入る理由などないはずなのに、砂浜に車が出入りしたり、人が捨てるゴミの増加によって子ガメに被害がでているのだ。また産卵にくる母ガメにも影響が出ている。それは街の光につれられて引き寄せられてしまい、海や砂浜に帰れなくなるのだ。このような事からカメの数は年々減りつつある。そのために講師の先生方は、毎年カメの産卵・放流の手助けをする活動を行っている。
しかしこのような活動をしても、人間の力はカメすべてには届かない。たとえ無事に海に出ることができたとしても、他の魚に食べられたりして数が減ってしまうのが自然なのだ。それなのに、私たち人間の行動によってカメの数は益々減ってしまうのではないか。
「人間なんて生まれなければよかった。」そう思うのは私だけだろうか。他の動物たちは私たち人間がキライだと思う。それをヒシヒシと感じるのだ。しかし人間が消えることは当分ない。そのためにも、他の動物と共存しなければいけないのだ。
カメを守る事、それは私たち人間にとってもいい事のはずだ。第一に街の光を減らす事。これにより、電気の消費量は減り夜空だってきれいに映る。第二に砂浜の車の出入り。元々、車が砂浜に入る理由はないはず。無駄な走行をやめれば、ガスの排出は減るし、カメは海に行くことができる。第三に砂浜のゴミ。ゴミは私たちが持ち帰るのがルール。私たち一人ひとりがルールやモラルを守れば、美しい砂浜を守れるし、カメや他の動物も守れるはずだ。「誰かがやればいい。私はしなくてもいい。」なんて考え方は、もう捨てなければならない。人間は他の動物から見れば新参者。そんな人間が、この地球を我が物顔でいるのはおかしいと思う。
子ガメ。それはとてもとてもかわいいものだ。この尊い命を守ることは、美しい地球を守ることにつながるのだ。
2004年 優秀賞(中学生部門)
静岡県 中学校2年 清野 容子