昨年、私の住む愛知県では「愛・地球博」が開催された。テーマは「自然の叡智」ということで、緑化壁を用いて都市の気温上昇を防ぐバイオラングや、汚水を再利用する循環トイレなど、地球環境を守るための様々な工夫がなされていた。閉幕後の今月の新聞に、『万博の「パーク&ライド」システムによりCO2の排出量が1万2千トン削減できた。』との記事がのっていた。
「パーク&ライド」とは、自家用車での来場者を減らすため、会場から離れた場所に車を駐車させ、そこからシャトルバスで送迎するというものである。このシステムにより一人を1Km運ぶのにCO2が119g削減できるそうだ。
このように、1人1人が自動車で移動するよりも、まとめてバスに乗った方が地球環境に優しいことは明らかだ。市役所なども「公共交通機関を利用しましょう。」と熱心に呼びかけている。しかし、道路を見てみると交通渋滞や違法駐車の車両が多く、バスはとても走りにくそうで、あれでよく時刻表通りに運行できるものだなと思ってしまう。運行に遅れが多ければ、お客さんもどんどんバスから離れていってしまうだろう。バスの利用を呼びかけているけれど、みんなに利用してもらうための社会的な仕組みが整っていないと感じる。
一部の道路に設置してあるバスレーンを見たことがある。時刻によってバス専用になる車線がある道路では、違法駐車も少なくバスが快適そうに走っていた。そして、その隣の車線では自家用車が渋滞の列を作っていた。きっと、「今度バスに乗ってみようかな。」と思ったドライバーもいたと思う。このように、ただ公共交通機関の利用を呼びかけるだけでなく、バスレーンをもっとたくさんの道路に作ったり、違法駐車の監視をしっかり行ったり、郊外に駐車場を整備して「パーク&ライド」システムを推し進めて、自家用車よりバスの方が便利だと感じることができるような社会の仕組みを整備しなければ効果は少ないと思う。
CO2の削減については、京都議定書により国際的に各国の削減量が割り当てられている。ししかし、日本はほとんど実行できていないようだし、国民もあまり実感を持っていないように感じる。だから日本の国内についても「日本版京都議定書」のようなものを作って、各都道府県などの自治体ごとに削減量を割り当てて、競わせるようにしたらよいと思う。達成できなければ、国からの予算が減り住民の税金が増えるような仕組みになれば、自治体や住民はもっと真剣に自家用車を減らす方法を考えるだろうし、日本全体のCO2削減につながるのではないだろうか。みんながやる気になった時、1人1人の行動は無視できるほど小さなことでも、大きな力になると思う。
2006年 地球こどもクラブ賞(中学生部門)
愛知県 中学3年 市川 哲