こんな雑然とした風景は見た事がない。辺りは土砂くずれで岩がむき出しになり、折れた木々が散乱している。土の上には雑草が生え、長い間ほったらかしにされていたのが分かる。僕はテレビで見た、アメリカの台風カトリーナにおそわれたときの映像を思い出した。木を植えないといけないと直観的に思った。
ここは、福岡県八女郡黒木町。家から車で二時間半ほどの所だ。この辺りは、風倒木が多い事で有名らしい。ぼくの家族は、山村じゅくに入会して、荒れた山に木を植える活動に参加する事になった。山村じゅくとは、里山の自然を守り、いろいろな生物が住める森にするために木を植えるグループだ。
森林活動をするのは、雨の降っている山の急斜面。足下がすべりやすくなっていた。ぼくと弟は、歩いている時に足をふみはずしてすべり落ちてしまった。天気予報は晴れになっていたのに、あまはなかなかやまない。ぼくは山が泣いているんだと思った。
斜面を少しずつほっていくと、石がごろごろ出てきた。土の中にくわをいれるとがつんと音がした。長い間に竹の地下茎がはびこっていて、地下茎と石をどけながら土をほっていくのにほねが折れた。
ほった穴に苗木をさしこむ。苗木を四本ずつ1メートル四方の中にまとめて植えた。そうすると、競争して良い木が育つそうだ。苗木をさしこんだ後、石ばかりなので穴をうめる土が足りない。だからほかの所をほってその土でうめたりした。
ぼくたちは、たくさんの苗木を植えた。植えた苗木は、コナラが百二十八本、山桜が四十本にもなった。植え終わると、頭からたくさんのあせが出た。ぼくはカッパをぬいだ。山の方からふく風がとてもすずしく感じた。
仕事が終わった後、山村じゅくのおじさんが教えてくれた。
「あの山の頂上の、むき出しの岩に当たった台風の風が森の方にはね返って、たくさんの木が折れたんだよ。」
ぼくは、ここで苗木が育つか心配になった。また、おじさんが教えてくれた。
「コナラと山桜を植えたのは、木がやわらかくて風にしなるから折れにくいし、きれいな木だからなんだよ。」
植えた苗木が多くなって何十年後には、春は桜のお花見ができて、秋はドングリが採れる森になるだろう。それが楽しみだ。
昨年、動物のウンチでリサイクルをした時に、地球で木がたくさんつくられている事が分かった。ワンガリ・マータイさんがノーベル賞平和賞を受賞した時植林の大切さを知り、ぼくはぜひ植林活動をしてみたいと思った。ぼくは、これからの山村じゅくで、里山の環境を守るお手伝いをしていきたいと思う。
2006年 環境大臣賞(小学生部門)
福岡県 小学校5年 栗原 万誉