花作りの名人の祖母が、今日も花を届けてくれた。「シンビジウムは長持ちするから、学校へ持って行くといいよ。」と、にっこり笑って帰って行った。
花を見るとほっとする。むしゃくしゃした時だって、花を見ていると嫌なことを忘れる。
花は香水よりも薬よりも、体にいい感じがする。祖父が亡くなって三ヶ月。もう花は作らないと言っていた祖母が、また花作りを始めた「花が私を呼んでいるような気がする。」という祖母。
そんな祖母の名人技は、花を育てる気持ちと、たい肥だ。祖母の家には二つのコンポストがある。大島といえばみかん。くさったみかんや台所の生ごみ、魚の骨に野菜くず、みかん以外の果物の皮も、みんなコンポストに入れて、たい肥を作っている。一年半から二年で、生ごみがたい肥になると聞いた時には、なんと時間がかかるし、めんどうだなと思った。コンポストの中には、EM菌も入れているそうだ。EM菌は、そのものが肥料で、害虫を防ぐ働きがあり、コンポストの臭いを減らす働きもしているという。「買った方が楽じゃないの。」と言う私に、ごみが減るし花もよく育つのだと教えてくれた。
そう言われて、初めてコンポストをのぞいた私は、その臭いに跳んで逃げた。モワァーと何とも臭いが私をおそってきた。祖母は、驚きもしないでうれしそうに中をのぞいている。「やっぱり私に真似のできることじゃないな。」と、つぶやくばかりだった。
ごみを再利用する。口で言うのは簡単だけれど実行するのは、並大抵ではない。五年生と時に、竹炭作りをし、竹酢液を採った。出来るだけ薬を使わないで米作りをするのに、竹酢液が役立つと地域のお年寄りにならったからだ。大島に多い孟宗竹を切り、それを使って炭を作る。その際に出る竹酢液が防虫剤となる。孟宗竹の増加を押さえると共に、防虫剤を作ることと、生ごみからたい肥を作ることは、同じではないだろうか。簡単に手に入る物を使うのではなく、自然を生かし、自然から得られた野菜や果物、魚をもう一度、自然に返す。祖母が育てる花の美しさの秘密を、名人と言われる秘密を見つけた思いだ。
豊かな国「日本」で買えない物はないかもしれない。しかし、お金に頼ることなく、自然を上手く利用すること、時間はかかるけど手間をかけることが、元気な花の源であることを、私は祖母の花作りから学んだ。
祖母は今、以前のように元気になり、せっせと台所からコンポストへ通う毎日を送っている。そんな祖母を見ると、本当にうれしい。捨てればただのごみ。私も名人の祖母に負けないように、出来ることから始めたい。
2006年 高円宮賞(小学生部門)
山口県 小学校6年生 舛本 伶未