私の住む千代田区に、昨年、大きなプレゼントがありました。船二艘を、寄付してくださった方が、いらしたのです。「さくら」と、「清流」です。電気で動く、地球にやさしいエコ船です。私は気になって、千代田区役所に、その使い道を尋ねました。政策経営部の安藤さんは、こうおっしゃいました。
「今は、まだ、決まっていません。検討中です。」
私の頭の中に、大きな青空が広がりました。私も、提案させてもらおう。そこで、私は、いろいろなことを考えてみました。ここ千代田区には、日本橋川と神田川という二本の河川が流れています。神田川は、ふだんはおとなしい川ですが、雨が降ると暴れる川です。その神田川から、水道橋で分流し、九段下、日本橋を経由して、隅田川に注ぐ川が、日本橋川です。江戸時代、その河岸には市や倉庫が並び、物流の拠点となっていたそうです。しかし、今は、首都高速道路が、川の真ん中を通り、上空からは見えません。
私は、ここに、エコ船を走らせたらよいと、まず思いました。東京は、交通が発達した、便利な街とよく言われます。しかし、高速道路も一般道も、渋滞の連続です。おかげで、バスも、運行ダイヤが乱れがちです。ここに、エコ船が登場したら、どうなるか。まず、トラック輸送の荷物が、エコ船に積まれ、運ばれるようになります。すると、道路から、その分、トラックが減ります。恐らく、渋滞も減るでしょう。窒素酸化物も。
次に、東京の鉄道は、皇居を中心に、放射線状に伸び、東部地区、西部地区とも、東西方向の電車網がほとんどで、南北を結ぶ電車網は、あまりありません。ところが、縦方向には、河川があるのです。東部地区には、江戸川・中川・隅田川が、西部地区には、多摩川・秋川・淺川が、悠々と流れています。私は、ここに、エコ船の活路があると思いました。エコ船を、東西の交通網を南北につなぐ接着剤にすれば、まさしく、交通網になると。そして、エコ船の船着場が、近隣の会社や学校に通う人のための電車の駅・エコバス・エコ自動車や自転車のターミナルにつながる街並みが見えました。
私の夢は、さらに、広がりました。河川の両岸には、今でも、花や樹木が多く見られます。そこを、荷物ばかりでなく、多くの人たちが行き交えば、しばしの憩いの場になると思うのです。まして、川は、正直です。人が汚せば、水面が汚くなります。人々は、利用する過程で、きっと、環境保全を心がけるようになると思いました。
電気で走るエコ船。私には、それが、電車・エコバス・エコ自動車・自転車をつなげ、エコ交通網のきっかけになると思いました。そして、その先にあるもの。それは、やさしい心に支えられた緑あふれる地球。私は、そんな夢を、二艘のエコ船から抱きました。
2007年 環境大臣賞(中学生部門)
東京都 中学校2年 岡部 達美