「オレは、将来科学者になる。そして、温暖化をくい止めるんだ」
僕が、将来の目標を決めたのは、小学六年生、中学受験まっただ中である。それまでは、私立中学進学を目指すのは、クラブチームの仲間とサッカーをするため、というたわいもない理由だった。しかし、その日から、僕の目標は「偉い学者になるため」に変わった。
そもそも、なぜ僕がそんな夢を持ったかというと、夏休みに見た、テレビ特番の影響である。
その夜、僕は塾の宿題を終えて、一休みしていた。その時、偶然、目にした番組に、僕は釘づけになった。
画面の中に大写しになった男が、海の方を指さす。「あそこに、私の家があったのです」男の指の先に陸地の痕跡はない。
このまま温暖化が進むと、今後地球がどうなっていくか、シミュレーションが延々と続く。僕はショックを受けた。このまま行けば地球上の全ての生物の生存があやぶまれる状況だということ、地球が死の星になってしまうということはわかった。シミユレーションがシミユレーションでなくなる日も近い、ということも…
その日から、僕は「温暖化」を意識するようになった。原因は二酸化炭素だけではないこともわかってきた。小学生の知識量ではあったが、植物がカギになると考えるようになった。以来、僕は植物の募金箱には、必ず募金することにしている。温暖化と植物について調べまくっていた僕は、当時、学校で一番環境問題と図書室に詳しかったと自負している。
中学生になると大好きだった理科の実験は減ったものの色々な知識が脳に入ってきた。今、僕が新たに注目している解決方法は、二酸化炭素を何かと結合させて、環境に悪影響を及ぼさない気体に変える方法だ。圧縮して、地中に埋める実験を見たことがあるが、あの方法ではいずれ限界に達してしまうと思う。
僕は将来、科学者になって、温暖化をくい止める研究をするつもりだ。小学校の卒業式、僕は、校長室に校長先生を訪ねて、宣言した。校長先生は、しばらくだまった後、いつもの穏やかな調子で、
「それは立派な研究です。頑張りなさい」と言ってくれた。将来、あの約束を果たしたい。
昨年、「不都合な真実」というドキュメンタリー映画が話題になった。僕たちが、便利で快適な生活を追求し続けた結果、かけがえのない地球に何が起こっているのか映像は告発する。人類は、たとえそれが不都合なことであっても、その真実から目をそむけることができないのだ。
かけがえのない地球を守るために、この美しい星に住む、僕たち一人ひとりが、努力すべきだと思う。僕は、人間の英知を信じている。
2008年 文部科学大臣賞(中学生部門)
和歌山県 中学校2年 中川 雄太