中学校に入学して電車通学になり、私は由利本荘市と秋田市の間の日本海をながめながら通学しています。1年生の秋ごろまでは、美しい海に見とれていて線路沿いで枯れている松は視界に入らず、また松を見ても「見苦しいから伐採してしまえばいいのに」などとしか思いませんでした。
1年生の冬になると困った事が起きました。日本海から吹く風の影響で、電車が動かないのです。少しでも早く学校に行き、友達と会話したり、宿題を片付けてしまいたい私は、この事に大変迷惑しました。なんで、風が強いのに、この線路付近には防風林が無いのだろうと思いました。そのとき、私の脳裏にあの枯れた松が浮かび上がりました。
枯れた松が気になった私は、松が枯れた原因についてインターネットで調べてみました。
すると、松が枯れたのには「松食虫」という松を食害する昆虫が関わっていることが分かりました。この昆虫らが松を急速に枯死させることを知って松のために私ができること はないだろうか、と考えました。しかし、何もできず、1年生2回目の春が来ました。
春休みが明けて初めて海をみたとき、私はとても驚きました。春休み前、茶色の落ち葉と枯れた松しかなかった場所に松の若木が植樹されていたのです。私は小学生の頃植樹体験をした時、とても疲れたのを覚えています。きっとあれだけの土地に松を植えたのはとても大変だったのではないだろうかと思います。
松が大きくなって海風を防いでくれくれるにはまだまだ時間がかかります。もしかしたら植樹をして下さった方の直接の役には立たないかもしれません。でも、そう遠くない未来に大勢の人の役に立つと思います。そう考えると自分の利益にならなくても、人と地球のために頑張ってくれた誰かに感謝せずにはいられません。
私は、その若木を見た日から省エネやエコに前より力を入れるようにしました。小さな事でも頑張ろうと思ったのです。
私たちは自然と共に生きてきました。でも今は自然と共にすごす時間が短くなっていると思います。だから自然のありがたさ、良さ、怖さがわからなくなっているのだと思います。私が「美しい」と思った海も今、地球温暖化で海面が上昇して近くの町を飲み込んでしまうかもしれません。
私は、「美しい」海も、誰かが植樹して下さった松の若木などにずっと在り続けてほしいです。そのために、小さな事でも、地球のために自分ができることを精一杯やりたいです。そして、この美しい自然をいつまでも残してゆきたいと思います。
2008年 審査委員長賞
秋田県 中学校2年 作左部 里和